船は港では安全だ。だが船はそのために作られたのではない
―ジョン・シェッド
リスクを冒してまで海へは出たくない、
そんな人がいる。
一方、リスクを承知で手にしたいものを積極的に求めたい、そんな人もいる。
どちらが正解かはわからないけど、海に出なければ常に安全だ、とも言いきれない。
大きい、小さいの差はあるにせよ、人生に常にリスクはつきものだ。
であれば、少しでもリスクを抑える術を身に着けておきたい。
リスクとは
ちなみにここでいうリスクとは不確実性のこと。
「リスクが大きい」というと、「とても危険だ」とか「大きなマイナスが出そう」と考えがちだけどそれだけじゃない。
例えば、「大きく上振れする(儲かる)かもしれませんよ」、という一見うれしい話、これもリスクが大きいということになる。
人は大小はあれど、様々なターゲットを設定して生活をしている。
1年後には株価が10%上がってほしいなあ・・
今月は100万円、売り上げたいなあ・・
同級生のあの子と付き合いたいなあ・・
30歳までには結婚したいなあ・・
子どもには難関大学に絞って受験してほしいなあ・・
キングボンビーに振らされる10個のサイコロ、全部1が出てほしいなあ・・
有馬記念で財布の中身を10倍にして年越したいなあ・・
380ヤード、パー4のミドルホール、きっちりパーセーブしたいなあ・・
残り60秒、5点差だけど断固たる決意で逆転したいなあ・・
etc…
ただ、いつもピタリとうまくいくとは限らない。
むしろ、うまくいかないことの方が多い。
そんな時、狙うターゲット(期待値)に対して上下・左右・前後、いずれの方向かを問わず、ブレの大きさを示すことができれば便利だ。
そのブレの大きさを数学的に示すのが「リスク」。
つまりリスクとは「期待値(期待リターン)」に対してどのくらいの「振れ幅」になりそうか、という目安のことだ。
例えばドライバーを選択した時の池ポチャリスクが高すぎれば、5番アイアンで刻む選択ができるし、3Pシュートを外すリスクが高すぎれば、左手を添えるだけのシュートを3回狙う選択もできる。
こんなふうに、リスクを知ることで、よりターゲットに近づきやすい選択をすることが可能になる。
そして、通常は期待値が大きいほどリスクも大きく、小さなリスクからは小さなリターンしか得られない。
リスクがリターンの源泉。
リスクがあるからこそ期待するものも手に入る。
ただ、そこで気を付けないといけないことがある。
リスクをやみくもに大きくしたところで、いくらでもリターンが増えるわけじゃない。
同じリターンを得るならリスクは必要最小限で抑えたい。
これをリスクマネジメントと言っていいだろう。
そのキーになる考え方が「分散」だ。
いろいろな分散
直感的に、ゴルフバッグの中身がドライバー14本とか、湘北のメンバーがみっちゃん5人はまずいよな・・と感じる。
同じように投資の世界、例えば株式投資でもよくリスク分散が大事なんて言う。
三菱UFJ銀行だけだと不祥事なんかで急に業績悪化すると不安だから、みずほ銀行も三井住友銀行も買っておこう(銘柄分散)
とか、
この先、低金利が続いて銀行も大変そうだから不動産会社も買っておこう(業種分散)
とか、
日本もこれから本格的な人口減少で期待できないから海外の銘柄も買っておこう(国際分散)
とか、
なんなら株式市場も不安定だから債券やゴールドも買っておこう(資産分散)
とか、
今がベストとは限らないからタイミングをずらして買っていこう(時間分散)
とか、
まあ、そんな具合だ。
ここで分散のコツは値動きができるだけバラバラなものを集めること。
もう少し丁寧に言うと、ただバラバラなだけではなく、それぞれの動きにできるだけ相関性がない(逆相関性が高い)ことが大切だ。
例えばANA株だけでなくJAL株にも分散し、さらに航空会社だけだと不安なので外食産業やアパレル、百貨店業界なんかにも分散していたとしても、今まさにコロナ禍では、そのすべてが大きく下振れしてしまっただろう。
「人の移動が制限される」という事態に同様にダメージを受けているからだ。
こんな時でも、例えば物流、医薬品、家電品、ゲーム、インターネット関連の業界は逆に業績を伸ばしている。
こんな風に、何かが起こった時に値動きが異なるものを組み合わせておくことでブレを抑えることが可能だ。
ただ、現実的には何十社、何百社という個別株を買い集めることは資金的に大変なので、投資の目的ができるだけリスクを抑えて「日本株」の平均的なリターンを得ることならば、なにも銘柄を研究したりせずに日経平均株価に連動したETFでも買っておけばそれで事足りるということになる。
そしてこれは金融業界における一つの不都合な真実だ。
リスク分散の知恵
そういえば先日、プロ野球とJリーグの日本一が初めて同日に決定するという話題があった。
それぞれ優勝したソフトバンクホークスにしても川崎フロンターレにしても長年にわたって安定した成績を残している。
こうした安定的に強いチームに共通して言えるのはリスク分散の知恵が十分に発揮されていること。
野球にしてもサッカーにしてもできるだけたくさんの得点を取ることと、できるだけ失点を抑えることが勝利につながる。
リターンの最大化だけを狙えばホームランバッターや強力なフォワードばかりをそろえればいい。
ただ、それだと好不調の波が大きかったり、ディフェンスがおろそかになってしまう。
短期決戦ならまだしも、シーズンを通して勝利を重ねるためには、やはりアベレージヒッターや攻守のバランスが良い中盤の選手、もしかすると得点力はなくても守備のスペシャリストを入れた方が「勝利」という目的には有利なのかもしれない。
こんなふうに限られた経営資源を使って、いかに安定した強いチームを作り上げるかはまさにリスク分散の知恵が試される。
そして、コロナ禍で開幕が遅れたり試合数が減ったりというスケジュールの変化や、体調管理や無観客でのモチベーション維持の難しさなど、なにかとイレギュラーなシーズンにおいてもこの両チームでは安定的なパフォーマンスが発揮されたのは決して偶然ではないと思う。
そしてこうした事例は、身の回りにいくらでもあるので探してみると面白い。
いつかもし君が、洋上を進む船を港から眺めているだけでは耐えられない、と、そんな風に思ったら、「期待するリターンはそのまま」に「リスクを下げる方法がある」ということをぜひ思い出してほしい。


