親御さんの相続に関する相談を受けていると、こんな質問をもらうことがある。
「父の財産は預金が1000万円くらい、あとは自宅が5000万円くらいだと思うんです。相続税はどのくらいかかりますか?」
そしてらっきいは決まってこう尋ねる。
その価格、どの価格?
少し意地悪なようだけど、ここをしっかり押さえないと相続についてまともな指針は示せない。
質問が「相続税がどのくらいかかるか(あるいはかからないか)」だったら、この時に知るべき「価格」は相続税評価額だ。
不動産の相続税評価額は土地部分と建物部分をそれぞれ異なる指標で導き出す。
土地は「相続税路線価(単に路線価と呼ぶことが多い)」という国税庁が定めた基準を使って計算する。
全国各地の路線価が過去数年分にわたって国税庁のHPで公開されていて誰でも見ることができる。毎年7月になると更新されているので見たことがない人はのぞいてみると面白い発見があると思う。
細かい計算方法はともかくとして、建物の前面道路に1㎡あたりの値段がついていて、そこに土地の面積を掛け合わせるだけ、これが基本だ。
ただ、これだとさすがに大雑把すぎるので、使い勝手を考慮して少し補正をしてあげる。
例えば間口が狭いとか、奥行きが長すぎるとか、形が悪かったり広すぎて使いにくいようであれば減額し、角地や両面道路だと日当たりがよかったり、車が停めやすかったりするから少し割り増ししてあげるといった具合だ
これで土地の路線価方式を使った価格の出来上がりだ。
次に建物は「固定資産税評価額」という市区町村が定めた価格をそのまま用いる。
不動産を所有していると毎年4月になれば市区町村から固定資産税の払い込み用紙(請求書)が届く。自治体によって書式は少し違うけど、ここに固定資産税評価額は記載されている。
冒頭の相談は自宅なのでこのままでいいけど、もしこの建物が人に貸している借家だったりしたら、自分では自由に使えない権利分(借地権割合、借家権割合から計算)を土地と建物の評価額からちょいと差し引いてあげればいい。
こうして土地と建物それぞれに計算した価格を足し合わせたものが「相続税評価額」という「価格」となる。
実は、路線価も固定資産税評価額も、これまた別のある「価格」をもとに定められている。
それが「公示地価」という価格だ。
公示地価は不動産取引が適正に行われるように、売り急ぎや買い急ぎがないような落ち着いた状態の時に、更地だったとしたらいくらで売買されるのが適当かという基準を国土交通省が示したもの。実際の取引価格(時価)の80%~90%くらいに抑えられているケースが多い。
1月1日時点の価格が毎年3月下旬に発表されて、必ずニュースに流れるので耳にすることも多いと思う。
そして、「路線価」と「固定資産税評価額」はこの「公示地価」のそれぞれ80%、70%を目安に設定される。
図)価格の相関図 一物四価なんて言い方もある
この関係が分かるだけでも、例えば冒頭の相談に対して、今わかっている価格(例えば固定資産税評価額)をもとに知りたい価格(路線価額)を推測することができる。
ほかにも都道府県が定める「基準地標準価格」や、不動産業者が自由に算出する「査定価格」などがある。
このように不動産価格といっても実は様々だ。
今自分が必要としている「価格」はどの「価格」なのか、しっかりと意識しておきたい。


