「シン・エヴァ」を観た人ってどのくらいいるのかな。
赤く染まってしまった世界をもとに戻す物語。
赤を青に変える物語は心に響く。
古くは、宇宙戦艦ヤマトがイスカンダルへ向かったのも赤く汚染された地球を青く戻すためだった。

ちなみに劇中に流れた「VOYAGER~日付のない墓標」を松任谷由実が「さよならジュピター」の主題歌として歌ったのが1984年。
今、航海(=VOYAGE)を語っているらっきいが、ちょうどエヴァパイロットの年齢だったころだと知ってちょっとテンションが上がったりもした。
さて、現実の世界でも、日夜、青い海を求める人たちがいる。
ブルーオーシャン戦略。
競争相手が少ない市場(=ブルーオーシャン)で高い利益率の確保を目指す、そんな経営戦略のこと。
インターネットが世界をつなげ、急速なグローバル化が世界中の企業を生存競争にさらした21世紀初頭。
W・チャン・キムとレネ・モボルニュが提唱したその戦略は、レッドオーシャンに苦しむ企業にとっては一つのあこがれとして広く受け入れられた。
ビジネスで成功するには「ブルーオーシャンを見つけなさい」と一度くらいは言われたことがないだろうか。
それだけ直感的に魅力ある戦略だったということだろう。
ちなみに、それまではマイケル・ポーターの競争戦略がよく知られていた。
ざっくりいえば競争に打ち勝つためには「低価格化(引く)」か「高付加価値化(足す)」かのどちらかを選ぶしかないというもの。
キムとモボルニュが新しかったのは、この2つが両立しうる「バリューイノベーション」の可能性に着目したことだ。
なにより「ブルーオーシャン」「レッドオーシャン」という言葉がキャッチ―で分かりやすい。
ところで、この「ブルーオーシャン戦略」はかなり誤解されて広まっているように思う。
「楽して儲かる市場がどこかにないかなあ・・・」とあちらこちらを探すこと(市場調査)で見つけようとしている人に良く出会うからだ。
チルチルとミチルが青い鳥を探しに毎夜夢の中を旅したように、多くのマーケッターたちが青い海を探して漂流を続けているようにも見える。
青い海を探しているはずが、なぜか赤いネオンに引き寄せられる、新橋あたりでよく見かける光景だ。
あてもなくやみくもに探していたのでは「青い鳥症候群」ならぬ「青い海症候群」と呼ばれても仕方ない。
そもそもブルーオーシャンは探して見つかるものなのか?
簡単に見つかるのなら、すぐにまた激しい競争が生まれて赤く染まってしまうのではないか。
そう、
簡単に見つからないからこその「ブルーオーシャン」だ。
「ブルーオーシャン戦略」の肝は、どこかにあるブルーオーシャンを見つけることではなく、自ら創り出すこと(市場開拓)にある。
もちろんこれは大変なことだ。
それでもレッドオーシャンならどこにでも、いくらでもある。
目の前に広がるレッドオーシャンを、ほんの一部だけでも青い海に戻すこと(市場変革)はできないだろうか。
そして、再び赤く染まらないよう工夫はできないだろうか。
「ヱヴァ新劇 破」でシンジ君たちが加持さんに連れて行ってもらった海洋生態系保存研究機構では赤く染まってしまった海を、再び生物が住める青い海に戻す試みをしていた。
こうした地道な研究が「シン・エヴァ」の冒頭、大地まで赤くコア化したパリを浄化した封印柱の再起動や、第三村を守ってきた相補性L結界浄化無効阻止装置など、人外未知だった一連のアンチLシステムの解明、制御につながったのだろう。

青い海がどこかにあるはずだと期待してやみくもに探し続ける(漂流)
青い海がなぜ青いのかを知り、再現する努力を続ける(航海)
似ているようでかなり違う。
チルチルとミチルが青い鳥を見つけたのは夢から覚めた部屋の鳥かごの中。
実はとても身近なところにあった。
でも、一生懸命に探した経験が無駄だったわけじゃない。
その努力がなければ身近な青い鳥にも気付けなかったのかもしれない。


