ちょうど1年ほど前のこと、大学時代の先輩からこんな話を聞いていた。
10歳年下の奥様が、老後の資金が心配で、とあるFPセミナーに通い始めたとのこと。
テーマはNISAやiDeCoに関するもので、将来のインフレに備えた長期的な資産運用が目的だ。
子どもがいない先輩夫婦がかなえたいことはざっくりこの2点。
1.平均寿命で考えると20年近く続くと想定される奥様の老後のために必要な資金を確保したい
2.インフレに備えて、これまで普通預金中心で貯蓄してきた資産をリスクを抑えながら必要な範囲で運用したい
まさにファイナンシャルプランニングが役だつ場面で、セミナー受講の成果に期待をされていた。
そして1年後、再会した先輩からポツリ、
どうしてこうなったのかな・・
主催者が保険代理店だということに少しは疑問を持ちつつも、セミナー内容はリスク分散の方法やNISA、iDeCoの仕組みや魅力、インフレ対策としての運用の要点など納得感の高い内容だったとのこと。そしてセミナーの後、気持ちが盛り上がったところで個別相談を申し込むと、数度の面談を経て受けた提案は夫婦それぞれ同じ内容の生命保険商品。
内容はだいたいこんな感じ。
・(O生命保険)米ドル建て終身保険10年払い 月額保険料2.5万円×2人
・(M生命保険)変額保険(有期型)30年満期 月額保険料2.5万円×2人
・(M生命保険)オーストラリアドル建て一時払い変額終身保険 500万円×2人
「外貨は金利が高い」だとか、「株式や債券を組み合わせることでリスク分散が図れる」など、セミナーで聞きかじったフレーズがところどころに散りばめられた提案に、数度の面談を経て断りにくさも加わって結局は提案通りに加入することに。
はて?
提案をしたFPにいくつかツッコミ、
・奥様が先に亡くなったときの保障は不要なのに、なぜ夫と同じ生命保険を提案したの?
・すでに手元にある余剰資金を運用したいのに、なぜ機会喪失してまで何十年もかけて毎月保険料を支払っていく必要があるの?(時間分散というならなぜ積立NISAではだめだったの??)
・リスクをできるだけ抑えたい先輩夫婦になぜ変額( 価格変動リスク )×外貨(為替リスク、しかもオーストラリアドル建て)を選択したの?
不要な装備を積んでいては船の燃費が悪くなる。
他人の船まで曳航しては、目的地への到着がじわりと遅れる。
波が高いだけじゃなく海賊が跋扈する航路をわざわざ選んでいては帰港は覚束ない。
わかっている、この提案に深い理由がないことを。
手数料体系が透けて見えるだけ。
そして、えげつない、という言葉が頭をよぎる。
先輩夫婦が期待していたのは安全安心な航海のためのナビゲート。
なのに気が付くと、そこは誰かが連れていきたいだけの危険な航路。
ナビゲーター選びも簡単ではないようだ。


