金融庁のある調査(2018 年 6 月)では国内主要 29 行の窓口で投資信託を購入した顧客のうち 約半数にあたる46%が運用損失を抱えているという。
2018年の6月といえば日経平均が24000円前後をつけていたころだから特別に市況が悪かったわけでもない。
これが「貯蓄から投資(資産形成)へ」というスローガンのもと、国家ぐるみで展開してきた一大キャンペーンの結果だとするとなにか違和感を感じないだろうか。
ここで、日本の昨今の投資教育事情について振り返ってみよう。
「貯金」は経済成長の元気玉
戦後しばらくは、国民にはできるだけ「郵便貯金」「銀行預金」といった貯蓄をしてもらうことが、政策の大きな柱だった。
復興、高度成長を達成するためにはたくさんのお金が必要だ。
でも政府にはお金がない。
どうやってお金を集めようか。
国民のみんな、オラに元気をわけてくれ!

こうして(?)集められた郵便貯金は「財政投融資」を通じて公共事業につぎ込まれ、銀行預金は企業への融資として工場建設などの設備投資に回り、高度経済成長を実現する支えになったんだろう。
このころ金融機関はいわゆる護送船団方式と呼ばれた各社横並びの条件で、まさに国策のもと信頼を集め、そして同時にお金を集めた。
ところが、平成に入ってほどなくバブルがはじけると、事態は一変した。
日本版金融ビッグバンキャンペーン
集めたお金を投資する先がない。
税収が上がらない。
これまで成長が続くうちは目をつぶってこれた少子高齢社会が現実味を帯び、今後膨らみ続けることが約束された社会保障費をどうやって賄えばいいのか。
そんなとき世界を見渡すと、1960年~70年代に社会保障費の増加、基幹産業の国有化などやや左寄りな政策を背景に社会経済の停滞(英国病)を招いていたはずのイギリスが見事に復活を遂げていた。
なぜか。
どうも、金融ビッグバンというのが成功したらしい。
よし、日本版金融ビッグバンを推し進めよう!
ちなみに、この「日本版~」というのがどうも日本の行政は好きらしい。
「日本版不動産投資信託(JREIT)」、「日本版少額投資非課税制度(NISA)」、「日本版401K(確定拠出年金、そのうち個人型はiDeCo)」「日本版DMO(観光地域づくり法人)」etc…
元来他国の文化、制度をうまくアレンジして取り入れてきた日本人にはなじみやすいのだろうか。それとも、はやりものに飛びつきやすい国民性を利用されているのだろうか・・・
話がそれた。
なにはともあれ、当時の日本が抱えていた課題をすでに克服した事例があるならまねるっきゃないじゃんということに(本当に克服していたのかは微妙という説もあるけど・・)。
足元を見れば、バブルがはじけたとはいえ国民の金融資産は約1400兆円、そのうちいわゆるリスク資産は1割程度。ほとんどは極めてリスクの小さな預貯金や定額の保険・年金だ。
これら預貯金をリスク資産に向かわせることで、その利潤から税収を増やそうという目論見だったんだろう。
そのために、まずは郵便貯金、農協貯金、銀行預金しか知らない(知らされてこなかった)国民に投資の魅力を伝えなければ始まらない。
そして政策は「貿易立国」改め「金融立国」を目指して大きく舵が切られ、国民に対しては「貯蓄から投資(資産形成)へ」という旗振りのもと、銀行、証券会社などの金融機関を中心に積極的な投資教育キャンペーンが展開された。
その担い手として、ファイナンシャル・プランナー(FP)が日本で普及し始めたのもこのころだ。
らっきいがFP資格を取ったのもまさにこの時期。
FP資格を持ち、その一翼を担った一人としてあえて言えば、投資教育の実態は商品を買ってもらうためのいわばプロモーション活動といえるものだった。
「儲かります!」「しなきゃ損!」といった偏った情報にバイアスがかかってはいなかったか。
株や債券、不動産は有効な投資だよと教えながら、結果は投機への誘導ではなかったか。
今でも銀行や証券会社、不動産販売会社などのホームページには必ず投資教育のページがあるし、店舗ではいつものように投資セミナーが行われている。
そのほとんどは、とてもしっかりした内容のものだ。
金融庁では金融機関に対して「フィデューシャリーデューティー(顧客本位の業務運営)」を強く求めている。
なのに巷では「ダマされた」とか「考えてたものと違ってた」なんて声が変わらず聞こえてくるのはどうしてだろう。
数ある金融商品も市場競争にある程度さらされているものなら「よい」も「わるい」も基本的には大差がないはず。
冒頭の金融庁調査で46%の人が抱えている運用損失も、それが正しい判断でとっているリスクの結果であれば悪いこととも言い切れない。
巷で起こっているのはおそらく「ミスマッチ」なんだろう。
投資でより重要なのは自分に「合っているか」「合っていないか」だ。
自分のライフプランに「役に立つか」「役に立たないか」と言ってもいいだろう。
信用ある銀行で購入した投資信託はその人の人生にこれから役立つのだろうか。
ライフプランには波があり終わりもある。
自分の航海に必要な道具を見極めたい。
そのためにFPは目利きのパートナーでありたい。


